この記事では、ポートフォリオ化したシステムの複利計算と評価方法について解説します。
長期運用には、複利運用が適しています。
悩ましいのは、ポートフォリオ化したシステムの複利計算だと思います。
この記事では、複利計算の方法とその結評価方法について解説します。
Contents
複利運用の特徴
長期運用に適しているのは、複利運用になります。
複利運用は、証拠金残高に比例して、ロットを変える運用方法です。
簡単に言うと、「買ったら、ロットを増やし、負けたら、ロットを減らす」方法です。
複利運用は、最大ドローダウン率(=B÷A)が小さくなり、退場する確率が大幅に低減されます。
また、幾何級数的に利益が増える為、長期運用により爆益を期待する事ができます。
弱点は、最長ドローダウン(=C)が長くなります。
しかし、最長ドローダウンは自己管理やメンタル管理で耐え抜くことができます。
複利運用は、退場リスクを減らし、幾何級数的な利益が期待できるので、長期運用に適しているという事です。
もう少し、詳しく内容を知りたい人は以下を参照下さい。
ポートフォリオ化したシステムの複利計算
システム単体の複利運用は、EAのバックテストで確認する事が可能です。
しかし、複数システム(複数通貨ペア)の複利運用はバックテストでは見積もる事ができません。
複利運用は、口座残高に比例してロット調整する方法です。
複数システムを複利運用する場合は、複数システムを一つの口座での管理する必要があります。
ポートフォリオを組む狙いは、ドローダウン時期を分散し、ドローダウンを小さくする事です。
口座を分けては、ポートフォリオの効果を十分に発揮させることが出来ません。
ここで問題があります。
EAのバックテストは、複数システムを同時に行えません。
バックテストは、1つのシステムずつでしか評価する事が出来ません。
それでも単利運用の場合は、Quant Analyzerを使えば、複数システムの結果を合成する事で評価する事ができました。
複利運用の場合も、Quant Analyzerを使えば、複数システムの結果を合成する事は可能ですが、
別々の口座で運用した場合の結果しか評価することができません。
複数システムを一つの口座で複利運用したケースは、少し計算を追加する必要があります。
複利運用の計算方法
複利運用は、単利のバックテストに計算を加えると事で求める事ができます。
1つの通貨ペアの複利運用は、バックテストでも求める事ができます。
まずは1つの通貨ペアの複利運用を2つの方法で計算し、計算誤差を確認します。
(1)バックテスト結果 :複利運用のEAのバックテスト結果
(2)Excel計算結果 :単利運用のEAのバックテスト結果から複利運用を計算する。
単利のバックテストから複利運用を計算(Excel)する。
単利のバックテスト結果から複利運用を計算で求める手順を紹介します。
① 単利のバックテストを実施
② Quant Analyzerを起動
Quant Analyzerは無料で多くの機能が使える優れたツールです。Quant Analyzer(インストール手順)
③ Load reportをクリック
④ バックテスト結果を保存しているファイルの場所を選択
⑤ 相関を求めたいファイル名(バックテスト結果)を選択 - OKボタン
下部に選択したファイルが反映される。
⑥ List of tradesタブ - CSV保存 を選択
⑦ CSVファイルを開くと、全トレード結果が以下のような表になっています。
⑧ 以下のように作り変えます。
U~AB列が追加した内容です。
緑色箇所:インプット、 橙色箇所:計算式
インプット
・ 文字列を入れる為に、1行目を追加しています。
・比率(U列2行):初期証拠金における単利と複利のロット比率(複利/単利)
例:初期証拠金100万円 単利で損切1万円(1%)、複利1%の場合 比率は1倍
初期証拠金100万円 単利で損切1万円(1%)、複利2%の場合 比率は2倍
・初期証拠金(V列2行):初期証拠金を入れる
・最大証拠金(W列2行):初期証拠金を入れる
計算手順
・複利計算の利益(U列):U3=J3*$U$2*V2/$V$2(=単利計算の利益×比率×証拠金残高÷初期証拠金)
・証拠金残高(V列):V3=U3+V2(直前の証拠金+複利計算の利益)
・証拠金の最大値(W列):W3=IF(V3>W2,V3,W2)(=直近最大値>証拠金残高のとき、直近最大値、それ以外は証拠金残高の更新)
・ドローダウン(X列):X3=W3-V3(=証拠金の最大値 - 証拠金残高)
・ドローダウン%(Y列):Y3=X3/W3(=ドローダウン÷証拠金の最大値)
計算結果
・純益(Z列2行):Z2=V2495-V2 (証拠金残高の最終値 - 初期証拠金)
・最大ドローダウン(AA列2行):AA2=MAX(X3:X2495)(ドローダウンの最大値)
・最大ドローダウン率(AB列2行):AB2=MAX(Y3:Y2495)(ドローダウン率の最大値)
複利運用(Excel)の計算誤差
1つの通貨ペアの複利運用をバックテスト/Excel計算のそれぞれで求めた結果を以下に示します。
・Excelを用いた複利計算の誤差は、数パーセントです。
誤差の理由
・厳密な複利計算の違い(エントリ中の証拠金残高変化の影響)
・ロットの切り上げ/切り下げのズレ
・エントリ/決済順序のズレ 等
ポートフォリオ化したシステムの複利計算
複数システムの複利計算は、単体システムの要領と同じです。
① 上記の⑤と同様の手順で、ファイルを1つずつ選択
② ファイル左下にチェックを入れ、Create Portfolioをクリック
③ Portfoliosタブをクリック、Portfolioが完成している。
④ 下図の赤枠周辺をクリックすると反映されます。
以降は、上記の⑥以降と同じです。
CSVファイルを開くと、全通貨ペアのトレード結果がまとまっています。
ポートフォリオ化したシステムの複利計算結果の評価
複利計算の評価結果を以下に示します。
ポートフォリオ効果を比較するために、計算を追加しています。
リカバリーファクター = 利益 ÷ 修正DD
修正DD = (利益+初期証拠金)×%DD
修正DD : 最大ドローダウンを最終証拠金残高で換算した額(最終証拠金で最大ドローダウン率(%DD)が生じた場合)
複利におけるリカバリーファクターは、複利の値によって値が変わります。
単利とポートフォリオを比較する場合は、ポートフォリオの複利を0.2%(=1%/5通貨ペア)とする必要があります。
・ポートフォリオ化する事で、ドローダウンが大幅に改善されます。(%DD=4%)
・ポートフォリオ化する事で、リカバリーファクターが大幅に改善されます。(リカバリーファクター=12.8)
まとめ
この記事では、ポートフォリオ化したシステムの複利運用の計算と評価方法について解説しました。
計算過程で、Quant AnalyzerとExcelを使います。
計算自体は難しくないので、是非、実施してみて下さい。
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