今回は『複数通貨ペアや複数時間軸に分散する理由』についてご紹介します。
EA開発者の目線で記載していますので、参考になると思います。
相関係数
まず、本題に入る前に、関係が深い『相関係数』から解説していきます。
Wikipediaでは、『相関係数は、2つの確率変数の間にある線形な関係の強弱を測る指数である』と記載されています。
この説明では、専門家でない限り、難しいと思うので、FXで考える事にします。
例えば、2つのシステムの相関を考える場合、
2つのシステムのエントリーポイントや損切ポイントが似ているシステムの場合、相関係数は大きく、
2つのシステムのエントリーポイントや損切ポイントが全く違うシステムの場合、相関係数は小さくなります。
相関係数が大きいとドローダウンのタイミングも近く、相関が小さいとドローダウンのタイミングも異なる傾向にあります。
相関係数は -1.0 ~ 1.0 の間の数字で、強弱を測る指数で、目安は以下の通りです。
相関係数を重視する理由
ではなぜ、『相関係数を重視』する必要があるのでしょうか?
それは、相関係数が小さいシステムを組み合わせると、ドローダウンが小さくなるからです。
2つのシステムを組み合わせた時のリスクは、次式で表されます。
『リスク=(リスクA^2+リスクB^2+2×相関係数×リスクA×リスクB)^0.5』
(参考:使える売買システム判別法 : 確率統計で考えるシステムトレード入門)
理想は、相関係数がマイナス(逆相関)のシステムを組み合わせることです。
つまり、『順張りシステムと逆張りシステムの組み合わせ』が相性がいい事になります。
しかし、エントリ/損切のタイミングが逆になるような、2つのシステムを探すことは容易ではありません。
現実的な目標は、相関係数”0”(相関なし)のシステムを組み合わせる事です。
-----参考(株式とFX)---------+
株式を運用する際、債券や金をポートフォリオに加えるのは、上記を利用してリスクを小さくする事が狙いです。
但し、株式は現物取引が可能なので、リスクを小さくしなくても、最大利益を狙えますが、
FXの場合は信用取引ですので、最大利益を狙う場合は、資金がパンクしない範囲でロットを大きくする必要があり、リスクを小さくする必要があります。
複数通貨ペアや複数時間軸に分散する理由
Lightシリーズでは、様々な方法でシステムを分散しています。
『通貨ペア』『時間軸』『パラメータ』をそれぞれ、相関係数が小さくなるように分散しています。
ここでは、『通貨ペア』『時間軸』の相関係数を調査しました。
通貨ペアの相関
『Light-α』と『Light-β』について、通貨ペア間の相関係数を調査しました。
Light-αにおける通貨ペア間の相関係数
Light-βにおける通貨ペア間の相関係数
各通貨ペア間でほとんど相関がない(-0.2~0.2)であることが分かります。
つまり、多くの通貨ペアに分散する事でリスク低減が図れます。
時間軸の相関
『Light-α』について、時間軸の相関係数を調査しました。パラメータを調整して時間軸を模擬しております。
Light-αにおける時間軸間の相関係数
少し分かりにくいですが、
Light-αは15分足ですので、33%が5分足、400%が1時間足に当たります。
時間軸を変える事でも、相関を小さくすることが可能であることが分かります。
その他(異なるシステム)
それぞれのシステムが、プラスの期待値を持っている事が条件ですが、
異なるシステムは、相関係数が低く、リスクを小さくするのに有効な組み合わせです。
難しい事は、機能するシステムを発見する事です。
過去には、以下のような調査があったようです。
『基本的なシステムは、7種類上げられているが、現時点では自分が理解できるのは3種類』
<参考:売買システム入門 : 相場金融工学の考え方→作り方→評価法>
『人工知能とか、高等数学を使うプログラマーを17人雇って検証したが、基本的な4~5のシステムの成績が一番良かった。』
<参考:マーケットの魔術師 システムトレーダー編>
機能するシステムを、一人で10個も20個も見つける事は、不可能です。
万が一、機能しないシステムがポートフォリオに混じっていると、パフォーマンスは低下します。
しっかり機能するシステムを、『通貨ペア』や『時間軸』に丁寧に分散するのが、良いように思います。
まとめ
今回は、『複数通貨ペアや複数時間軸に分散する理由』について、解説しました。
『通貨ペア』『時間軸』の相関係数は、ほぼゼロ(相関なし)です。
上手く組み合わせると、リスクが小さいシステムを作ることができます。
EAでポートフォリオを組む際に、参考にしてみて下さい。
参考記事
実際に通貨ペア、時間軸でポートフォリオを組んだ場合の効果を示しています。