この記事では、『最大ドローダウンの許容値の考え方と対策』について紹介します。
Contents
ドローダウン許容値
許容値の説明の前に、簡単にドローダウンについて解説します。
下図の ”(A-B)÷A” がドローダウン率です。
下図の ” C ” がドローダウン期間になります。
過去最大のドローダウン率を最大ドローダウン、
過去最長のドローダウン期間を最長ドローダウンと呼ぶことにします。
ドローダウンの許容値
ドローダウンの許容値とは、そのドローダウンを経験すると撤退するラインの事です。
それぞれの資金状況やメンタルにより異なり、個人差があります。
書籍によると、一般的な個人投資家のドローダウン許容値は、以下の通りです
・最大ドローダウンは30~40%
・最長ドローダウンは約18カ月
個人の許容値
大切な事は、自分の許容値を知る事です。
目安としては、そのドローダウン状況下でも、ぐっすり眠れることです。
眠れないようであれば、自分の決めた運用ルールを守れなくなります。
一般的には、自分が想像しているより、許容値は低い傾向にあるようです。
(思っていたより、ドローダウンに耐えられない)
運用方法(ドローダウン対策の準備)
ドローダウン期間/ドローダウン率は、運用方法に大きく関わっています。
その為、ドローダウン対策の説明の前に、運用方法について簡単に解説します。
運用方法は、大きく3種類に分類できます。
① 一定金額
② マーチンゲール法
③ 逆マーチンゲール法
一定金額
『一定金額』は、口座残高の増減に関わらず、リスク(ロットの計算方法)を変えない運用方法です。
口座残高が増えようと、減ろうと、ロットの計算方法を変えない運用です。
マーチンゲール法
前のトレードが負けたら、次のトレードはロットを増やし、短期間で資金を取り戻そうとする手法です。
ナンピンもマーチンゲール法に含まれます。
逆マーチンゲール法
資金が増えれば、その分だけロットを大きくし、資金が減ればその分だけロットを小さくする手法です。
いわゆる、『複利運用』です。
ドローダウンの対策(運用方法)
『ドローダウン期間を短くする方法』と『ドローダウン率を浅くする方法』について紹介します。
ドロータウン期間を短くする方法
ドローダウン期間は、運用方法で短くすることが出来ます。
運用方法によるドローダウン期間の順は、以下の通り
マーチンゲール法 < 一定金額 < 逆マーチンゲール法
負ければ、ロットを増やす『マーチンゲール法』が最も早くドローダウンから回復します。
ドロータウン率
ドローダウン率は、運用方法で浅くする事ができます。
運用方法によるドローダウン率の順は、以下の通り
逆マーチンゲール法 < 一定金額 < マーチンゲール法
負ければ、ロットを減らす『逆マーチンゲール法』が最もドローダウン率が浅い状態から回復します。
ドローダウン期間とドローダウン率のどちらを優先すべきか?
では、ドローダウン期間、ドローダウン率のどちらの方を優先すべきでしょうか?
良いとこ取りのシステムはありません。
逆マーチンゲールとマーチンゲールを混ぜても、結果的に、ドローダウン期間、ドローダウン率に跳ね返ってきます。
最終的には、ドローダウン期間を重視するのか、ドローダウン率を重視するのか、個人の判断になります。
ドローダウン期間は、メンタルに影響します。
1日でもドローダウンから抜け出したいのが人の心理です。
ドローダウン期間が許されない人は、マーチンゲル法を選択する事になります。
少しでも早くドローダウンから抜け出したい場合、マーチンゲールの比率が大きくなります。
ドローダウン期間と引き換えに、その分だけドローダウンは大きくなります。
最悪の場合は、損失で資金がパンクする事になります。
ドローダウン率は、メンタルと資金力に影響します。
ドローダウンが大きいと、『メンタル的に耐えられず撤退するリスク』と『資金不足で撤退する撤退するリスク』があります。
資金が大きく減少すると、投資活動自体から撤退してしまう人が多いと言われています。
資金さえあれば、時間を掛ければ乗り越える事も可能です。
どのシステムでもドローダウンはあるので、そのドローダウンを小さくする事で、途中退場せずに長期間の運用が可能になります。
但し、ドローダウン率と引き換えに、ドローダウン期間が長くなります。
私は、長期間の運用を目指しており、ドローダウン率を重視しています。
その為、プロの投資家たちは、逆マーチンゲール(いわゆる複利運用)を採用しています。
短期間で勝ち逃げを狙う人は、マーチンゲール法が適しています。
しかし、一発退場の可能性もあるので気を付けて下さい。
ドローダウンの対策(その他)
運用方法以外のドローダウン対策について、紹介します。
相関係数の低い組み合わせで、ポートフォリオを組むと、ドローダウンを小さくする事ができます。
相関係数は、トレードの近さに依存します。
エントリポイントや決済が似ている手法の相関係数は大きくなり、全く異なるトレード手法の場合は、相関係数が小さくなります。
異なるトレードを組み合わせると、ドローダウンを小さくする事ができます。
最適なポートフォリオ
ポートフォリオに最適な組み合わせの例を紹介します。
(1)手法
複数の手法を組み合わせる事で、ドローダウンを小さくする事が可能です。
問題は、優位性のある手法が、ほとんどない事です。
一つでも見つける事は大変です。
優位性がないシステムをポートフォリオに加えると逆効果になるので、
異なるシステムでポートフォリオを組む事はお勧めしません。
(2)通貨ペア
同じ手法でも、通貨ペアが異なれば、エントリポイントや決済が異なります。
私の経験では、通貨ペアによる相関係数はほぼゼロです。
ポートフォリオを組むのに最適です。
(3)時間軸
同じ手法でも、時間軸が異なれば、エントリポイントや決済が異なります。
複数時間軸も、ポートフォリオに適しています。
ドローダウンの見積もり方
ドローダウンの見積もり方について紹介します。
裁量トレーダ
裁量トレーダの方は、まず、手法をシステム化するようにして下さい。
裁量トレードとは、主観で行うトレードです。
主観が入る以上、数学的には何も証明できません。
一度、システム化し、後で紹介する方法でドローダウンを把握し、リスクを把握してから、裁量トレードに戻しましょう。
機械的なルールでも、儲かる手法という事が分かれば、自信を持ったトレードができるはずです。
システムトレーダ
トレード手法がシステム化されているので、検証にてドローダウンを確かめることが出来ます。
チャート画面から、一つ一つドレードして確かめてもいいですが、10年分行うので数カ月要します。
是非、EA(自動売買ソフト)化して下さい。
数分で10年分の検証が可能になります。
システムトレーダ(EA運用)
バックテストで、ドローダウンを検証しましょう
注意すべき点は、カーブフィットです。
カーブフィットとは、過去のチャートにパラメータ等を最適化する事です。
カーブフィットの問題は、ドローダウンを甘く評価してしまう事です。
最適化したパラメータは、過去のチャートにフィットさせただけです。
少しチャートが崩れると、成績が急に悪くなります。
カーブフィットを取り除く評価方法
カーブフィットを取り除く方法は、いくつかあります。
(1)最悪のパラメータで評価
最高のパラメータで評価する事が、カーブフィットです。
カーブフィットを除去する最も良い方法は、逆に最悪のパラメータで評価する事です。
少し厳しすぎる評価になる可能性はあります。
(3)ウォークフォワードテスト
例えば、以下のような方法です。
20年間分を評価する場合、最初の4年のデータの最適パラメータを求め、そのパラメータで5年目を評価する。
次に2~5年目のデータの最適パラメータを求め、6年目を評価する。
これを繰り返して、20年分を評価する方法です。
最適化する期間を短くするほど、カーブフィットを除去する事ができます。
(2)異なる通貨ペアで評価
市販のEAを評価する場合は、パラメータ調整できない場合があります。
その場合は、パラメータ側ではなく、チャート側を変えるしかありません。
単一の通貨ペアにカーブフィットさせたシステムは、異なる通貨ペアで評価する事で実力が分かります。
たまに、『特定の通貨ペアだけ機能するシステム』がありますが、ほとんどは怪しいです。
カーブフィットしていないシステムは、どの通貨ペアでも機能します。
異なる通貨ペアで評価して結果が悪かった場合、それを受け入れかどうか、あなた次第です。
できるだけ、多くの通貨ぺで評価する事で、実力が見えてくると思います。
まとめ
最大ドローダウンの許容値の考え方と対策について紹介しました。
ちなみに、私が開発したEAは、
最悪のパラメータでリスク評価(ドローダウン評価)を行っており、それでも利益が出る事を確認しています。
参考にしてみて下さい。