7か月(2020/6/23~2021/2/1)のLightシリーズ(自作EA)を運用しました。
その運用結果を踏まえ、EAの改善点を検討しました。
この記事では、改善品のパフォーマンスについて紹介します。
2021/3/1 修正
内容 :Light-βを5通貨ペアから4通貨ペアに見直した。
理由 :GBPJPYはボラティリティ/スプレッドが低く、時間足の短いLight-βには適さない為(詳細は、Light-δに記載予定)
<改善に至る流れ>
(1)運用結果 :運用状況(2020/6/23~2021/2/1)
(2)分析 :運用結果の分析(バックテストとリアルトレード乖離の原因分析)
(3)EAの改善 :EAの改善(半年の運用結果を踏まえて)
(4)EAの改善品のパフォーマンス : 本記事にて紹介する
Contents
EA改善品の内容
7か月の運用結果をもとに調査した結果、現行品で問題ない事が確認されました。
しかし、いくつかの改善可能な点がみつかったので、EAを改良する事としました。
改善点は、以下の通り
・日本時間の早朝(スプレッド拡大時間)直後に、決済されないように修正する。
・日本時間の早朝(閑散時間)のエントリを避ける。
日本時間の早朝の決済回避
日本時間の早朝の決済回避の理由と改善結果について、紹介します。
早朝の決済回避の理由
日本時間の早朝は、スプレッドが拡大します。
本EAは、スプレッド拡大時には決済しないシステムを導入しており、スプレッドが縮小して、設定した許容スプレッドで決済されます。
少しでも、有利なスプレッドで決済されるためには、日本時間の早朝の決済を避ける方が望ましいと考えます。
また、日本時間の早朝は、市場参加者が少ない閑散時間であり、一般的にスリッページも大きくなります。
スリッページは、有利にも不利にも働きますが、不安定要素は少ない方が望ましいです。
以上より、日本時間の早朝の決済を避ける方針としました。
早朝の決済回避の結果確認(バックテスト)
各EAの改善後の決済時間の分布を確認します。
・日本時間の早朝の決済が概ね回避されています。(Light-α、Light-β)
(変則時間(クリスマス休暇)等の影響で、回避できな場合があります)
注)FXDDサーバ時間(冬:GMO+2、夏:GMO+3)
日本時間(GMO+9)に換算すると0時(冬:7時、夏:6時)
・偏った日本時間の早朝の決済が解消されました。(Light-γ)
Light-γは、スイングトレードであり、スプレッドの影響は受けにくいので、偏りを解消する事に留めました。
<Light-α>
<Light-β>
<Light-γ>
(参考)<(現行品)Light-γ>
日本時間の早朝のエントリ回避
日本時間の早朝のエントリ回避の理由と改善結果について、紹介します。
早朝のエントリ回避の理由
改善理由は、決済回避の理由と概ね同じです。
日本時間の早朝は、スプレッドとスリッページが拡大します。
少しでも、有利なスプレッドでエントリする為に、日本時間の早朝のエントリを避ける方が望ましいと考えます。
また、日本時間の早朝は、市場参加者が少ない閑散時間であり、一般的にスリッページも大きくなります。
スリッページは、有利にも不利にも働きますが、不安定要素は少ない方が望ましいです。
以下は補足理由ですが、
日本時間の早朝のエントリは、利益を出しにくい傾向にある事が確認されました。
閑散時間はテクニカルが機能しにくく、スプレッド拡大により、チャートの信頼性が落ちる事が理由の可能性があります。
以上より、日本時間の早朝のエントリを避ける方針としました。
早朝のエントリ回避の結果確認(バックテスト)
各EAの改善後の決済時間の分布を16年間のバックテストにて確認します。
・日本時間の早朝(6~7時周辺)のエントリが回避されています。
(変則時間(クリスマス休暇)等の影響で、回避できな場合があります)
注)FXDDサーバ時間(冬:GMO+2、夏:GMO+3)
日本時間(GMO+9)に換算すると0時(冬:7時、夏:6時)
<Light-α>
<Light-β>
<Light-γ>
その他の改善点(Light-γ)
今回の改善に合わせて、Light-γの分散パラメータ数を半減(8⇒4)しました。
Light-γの分散パラメータを半減させた理由
Lightシリーズでは、パラメータを分散させる事で、リスク/リターンの比率を高めています。
分散数を増やすほど、この比率は改善します。
一方、分散数を増やしすぎると、トレード可能な最小金額が上昇します。
また、分散させるパラメータは、相関が小さいほど効果があります。
相関が大きいパラメータを組み合わせても、リスク/リターンの比率は改善せず、トレード可能な最小金額でのリスクが上昇します。
通常、リスクを大きくとって、大きなリターンを狙う場合は、トレード金額(ロット)を大きくしますが、
Light-γはスイングトレードであり、最小限のトレード金額(ロット)でも、比較的大きなリスクを取る必要があります。
その為、今回のアップデートに合わせて、最小限の分散数に減らし、トレード可能な最小金額でのリスクを低減させる変更を加えました。
改善後のパフォーマンスの確認
本改善後のパフォーマンスについて、確認します。
評価内容は、以下の通り
(1)各通貨ペアのプロフィットファクター
(2)5通貨ペア運用した場合のパフォーマンス
① 通算(16年間)のパフォーマンス
② 月間パフォーマンス
③ 年間パフォーマンス
(3)ポートフォリオ効果
① 通貨ペアの相関
② システムの相関
③ ポートフォリオ後のパフォーマンス
各通貨ペアのプロフィットファクター
対策後のパフォーマンスについて、バックテストにて評価します。
条件検証
期間 : 2005年1月~2021年2月(16年間)
通貨ペア : 5通貨ペア(USDJPY、EURJPY、GBPJPY、EURUSD、GBPUSD)
Light-βのみ4通貨ペア(USDJPY、EURJPY、GBPJPY、EURUSD、GBPUSD)
スプレッド : 通常のスプレッド + α(余裕)の値で評価しています。(詳細は、GogoJungleのスプレッド比較)
運用資金 : 10,000ドル(100万円)
運用 : 単利 <損切:100ドル(1万円)>
各通貨ペアのプロフィットファクター
各通貨ペアのプロフィットファクターをバックテストにて確認しました。
参考として、通常時のスプレッドの結果も合わせて表記します。
・通貨ペアの全体でプラスの期待値がある事を確認した。
・平均的に、プロフィットファクターが 約1.2以上ある事を確認した。
■:通常時のスプレッド(参考)
■:バックテストのスプレッド
Light-α (平均値 ■:1.35、■:1.29)
バックテスト: バックテスト(Light-α 3.00)
Light-β (平均値 ■:1.25、■:1.19)
バックテスト:バックテスト(Light-β 2.00)
※ Light-βは、GBPJPYは採用しない
Light-γ (平均値 ■:1.37、■:1.34)
バックテスト:バックテスト(Light-γ 2.00)
5通貨ペア運用した場合のパフォーマンス
Lightシリーズは、5通貨ペアでポートフォリオを組んで運用する事を推奨しています。
5通貨ペアで運用した場合のバックテスト結果を紹介します。
①通算(16年間)のパフォーマンス
バックテストを行った結果を、Quant Analyzer4で分析した結果を示します。
Light-α
Light-β
5通貨ペア
4通貨ペア(USDJPY、EURJPY、GBPJPY、EURUSD、GBPUSD)
Light-γ
上記の結果をもとに、新旧バージョンを比較した表を以下に示します。
利益は、運用リスク(損切額や複利%)次第で大きく変化します。
ここで注目すべきポイントは、リターンとリスクの比率です。
リターンとリスクの比率を表す代表的な指標は、以下の2つになります。
① リカバリーファクター = 純益 ÷ 最大ドローダウン
② ゲインペインレシオ = 平均年間純益 ÷ 平均年間最大ドローダウン
<詳細記事 : ポートフォリオの組み方と評価方法(複数通貨ペアの合成)>
Light-α
・リカバリーファクター、ゲインペインレシオともに、改善しています。
・プロフィットファクターも改善しています。
Light-β
・リカバリーファクター、ゲインペインレシオともに、改善しています。
・利益を維持したまま、最大ドローダウンを小さくできています。
・プロフィットファクターも改善しています。
Light-γ
・ゲインペインレシオが、改善しています。
・リカバリーファクターは、トレード数に影響を受けるファクターです。
トレード数を半減させて、リカバリーファクターが微減は優秀。
Light-α、βよりも、値が低いのは、トレード数が少ない為。
・利益を維持したまま、最大ドローダウンを小さくできています。
・プロフィットファクターも改善しています。
<参考> ヒストリカルデータが異なる場合
本EAは、僅かなチャートの違いが結果に影響する事が分かっている。
(参照:運用結果の分析(バックテストとリアルトレード乖離の原因分析))
ヒストリカルデータが異なるFXDD(2005年~2020年)とGMOクリック証券(2007年~2020年)のデータで比較評価した。
・ヒストリカルデータが異なっても、長期運用した場合の結果は近くなることを確認した。
②月間のパフォーマンス
バックテストを行った結果を、Quant Analyzer4で分析した月間パフォーマンスの結果を示します。
ここで、知っていただきたい事は、月間ベースでは結構な確率で負けている事です。
ある一部を抜き出せば、連勝している年もありますが、連敗もあります。
フォワードテストの結果で一喜一憂せず、長期的なスタンスでいる事が重要と考えます。
Light-α
Light-β
Light-γ
③年間のパフォーマンス
バックテストを行った結果を、Quant Analyzer4で分析した年間パフォーマンスの結果を示します。
年間ベースであれば、負ける可能性が低くなります。
2020年も、バックテストでは、利益が出ていました。
2021年は、まだ1カ月のデータです。
Light-α
Light-β
Light-g
ポートフォリオ効果
Lightシリーズは、5通貨ペアでポートフォリオを組んで運用する事を推奨しています。
さらに、Lightシリーズ(α、β、γ)でポートフォリオを組むと、さらにパフォーマンスが良くなるように設計しています。
ポートフォリオを組むときのポイントは、それぞれの相関係数が低い事です。
相関係数は -1.0 ~ 1.0 の間の数字で、強弱を測る指数で、目安は以下の通りです。
<詳細記事 : ポートフォリオの組み方と評価方法(複数通貨ペアの合成)>
①通貨ペアの相関
バックテストを行った結果を、Quant Analyzer4で分析した相関係数の結果を示します。
通貨ペアの相関は、-0.2~0.2の範囲であり、ほとんど相関なしです。
通貨ペアでポートフォリオを組むことは、効果的だと言えます。
Light-α
Light-β
Light-g
②システムの相関
バックテストを行った結果を、Quant Analyzer4で分析した相関係数の結果を示します。
Light_αとLight_βは、弱い相関(0.2~0.4)がありますが、
Light_αとLight_γ、Light_βとLight_γは、ほとんど相関なし(-0.2~0.2)です。
Lightシリーズでポートフォリオを組む事で、パフォーマンスが改善されます。
③ポートフォリオ後のパフォーマンス
バックテストを行った結果を、Quant Analyzer4で分析した結果を表にまとめました。
EAを組み合わせる事により、リカバリーファクター、ゲインペインレシオが改善する事が確認できます。
つまり、リスクを小さく、大きなリターンを狙う事ができるようになります。
<FXDD>
<GMO>
仮に3つ(Light-α、β、γ)でポートフォリオを組んでも、月間ベースでは結構負けます。
ビジュアルでイメージしやすいように、損益曲線を示します。
・単一通貨より、複数通貨、単品EAより複数EAの方が、資産曲線が滑らかになる事が分かります。
Light-α
Light-β
Light-γ
Light-α、β、γ
まとめ
改善後のパフォーマンスをバックテストにて確認しました。
・改善によりパフォーマンスが、現行品バージョンと比較して向上していることを確認しました。
本改善では、不利なスプレッド、スリッページを回避しており、その効果をバックテストで確認する事はできません。
長期運用で、今回の改善の効果が蓄積されると考えています。
改善後のEAについて、
デモ口座でEAのアップデート内容に問題ない事を確認していますが、
念のために、リアルトレードでも問題ない事を確認しています。
以上