資金管理の考え方は、自分の許容リスク以下で運用する事です。(記事:資金管理の考え方)
システムのリスク < 自分の許容リスク
ここでの『リスク』とは『ドローダウン』事を指します。
30%のドローダウンに耐える事ができるのであれば、システムのリスクを30%以下にしようという、当たり前の考え方です。
難しいのは、システムのリスクの見積もり方です。
この記事では、リスクの見積もり方のヒントとして、一般的なトレードのリスク(ドローダウン)を予測した結果について紹介します。
Contents
資金管理の考え方のおさらい
FXでは、優位性のあるシステムを長期運用する事で利益を積み上げる事ができます。
優位性あるシステムでも、短期間では、ばらつきが支配的になり、ギャンブルの要素が多くなります。
長期間運用する場合の問題点は、ドローダウンです。
そのドローダウンを耐えなければ、その後の利益を得る事はできません。
その将来経験するだろうドローダウンを、自分の許容リスク以下にコントロールする方法が、資金管理になります。
システムのリスク < 自分の許容リスク
自分の許容リスクの見積もり方
多くの人の許容リスクは、書籍によると以下の通り(記事:資金管理の考え方)
・最大ドローダウン : 30~40%
・最長ドローダウン期間 : 18カ月
耐えられるリスクは、人それぞれの状況により異なるので、自分で決めるしかありません。
せっかく勝てるシステムを使っても、自分の許容リスクを見誤ると撤退する確率が高くなります。
邪心(大きなリターン)を無視して、真剣に自分の許容リスクについて考えましょう。
システムのリスクの見積もり方
一般的なシステムのリスクの見積もり方は、バックテスト結果を用いたものです。
問題は、バックテスト結果には、カーブフィットが含まれることです。
バックテストからカーブフィットを出来るだけ除去する方法も存在しますが、
その問題は、システムがブラックボックスのEAには適用できない点です。
さらに、計算が難しいです。
そこで、この記事では、比較的多くのシステムに適用できる
簡易的にリスクを見積もった結果について紹介します。
リスクのシミュレーション(勝率、リスクリワードからの予測)
ここでは、簡単な指標(勝率、リスクリワード等)から、リスクを見積もる方法とその結果を紹介します。
前提となる考え方
ほぼ全てのシステム(EA)は、カーブフィットされたものです。
バックテストで良い結果を得るために、パラメータ等がベストになるように調整されています。
よりよいパラメータを選択する事自体は悪くないですが、そのバックテスト結果を用いて将来を予想する事は避けるべきです。
フォワードテスト結果で予測する事も、避けるべきと考えます。
フォワードテスト結果も、ばらつきの結果の一つです。
仮に、現時点までは良い結果としても、将来的も同様の成果を上げられるとは限りません。
将来のリスクは、できるだけ保守的に見積もるべきです。
今回提案する方法は、いくつかの指標(勝率、リスクリワード、プロフィットファクター、頻度、期間)からリスクを見積ります。
将来のプロフィットファクター(以下、PF)を保守的に設定し、将来のリスクを推定します。
例えば、将来のPF=1.1とした場合のドローダウンを、将来のドローダウンとして評価します。
PF=1.1を小さいと思う人がいるかも知れませんが、PF=1.1で10年間運用できれば大きな利益を積み上げる事ができます。
せっかく、PF=1.1の優秀なEAを手に入れても、PFを過大(例えばPF=1.5)に想定した為に、リスクを小さく見積もる結果となり、撤退するのは勿体ない話です。
リスク推定のシミュレーションの方法
システムの特性を、勝率、リスクリワード、頻度で、表現します。
シミュレーションは、上記特性を元に、ランダム関数を用いて行います。
シミュレーションに用いたパラメータは以下の通り
・PF(プロフィットファクター) : 1.05、1.10、1.20
・勝率 : 30%~70%
・R.R.(リスクリワード) : PFと勝率から逆算(=PF×負率÷勝率)
・頻度 : 10回/月
・期間 : 10年間
・複利 : 1%、2%(月1回の頻度でロット修正するとした場合)
シミュレーション結果1 (勝率とリスクリワード と リスクの関係)
シミュレーション結果を以下に示します。
このシミュレーション結果は、ランダム計算を10,000回実施し、その中央値を示しています。
✔ PFが同じでも、勝率、R.R.が異なると、最大ドローダウン(DD%)、最長ドローダウン期間(DD期間:月)が異なる。
⇒ システムの特徴(勝率、リスクリワード)を把握した上で、将来のリスク(ドローダウン)を推定する必要がある。
利益 : 100万円で運用した場合の10年後の結果(単位:万円)
利益率 : 1年間の利益率(%/年)
DD% : 10年間に経験する最大ドローダウン(%)
DD期間 : 10年間に経験する最長ドローダウン(カ月)
シミュレーション結果2 (トレード頻度とリスク)
次に、トレード頻度をパラメータとして、シミュレーションを行いました。
✔ トレード頻度が倍(10回⇒20回)になると、最大ドローダウンは若干増加する。利益率は倍増する。
⇒ トレード頻度も、将来のリスク(ドローダウン)推定に必要なファクターである。
⇒ トレード頻度を増やす事で、リターンとリスクの比率を改善させる事が可能
✔ 複利を倍(1%⇒2%)にすると、最大ドローダウン、利益率ともに倍増する。
⇒ 複利(ロット)を大きくしても、リターンとリスクの比率を改善させる事はできない
利益 : 100万円で運用した場合の10年後の結果(単位:万円)
利益率 : 1年間の利益率(%/年)
DD% : 10年間に経験する最大ドローダウン(%)
DD期間 : 10年間に経験する最長ドローダウン(カ月)
確率 : ランダム計算を10,000回実施したときの発生確率
シミュレーション結果3 (まとめ)
保守的な評価の一例として、PF=1.1 として、3ケース(勝率30%、50%、70%)のシミュレーション結果を以下に示します。
✔ 手法の特性(勝率、R.R.、頻度)によって、想定されるリスクが異なるので注意する必要がある。
例えば、勝率50%、頻度80回/月の場合で、許容リスク30~40%とした場合は、複利0.5~1%程度に設定するのが良さそう。
シミュレーションの注意点
シミュレーションの注意点を、以下に挙げます。
✔ 本シミュレーションは、勝率、リスクリワードを元に計算しています。
つまり、利確と損切ラインを設定してトレードするタイプのシステムの評価結果になります。
異なるシステムでは、トレード頻度を実際より小さく見積もる等の調整が必要
✔ バックテストの勝率、リスクリワードを元にすると、PFは過大になります。
PFが保守的(PF=1.1?)になるように、勝率又はリスクリワードを調整する必要があります。
✔ トレード頻度は、独立したトレードの回数です。(相関係数=0)
相関があるトレードの場合は、トレード頻度を増加する効果が得られません。
ポートフォリオの組み方を参照下さい。(記事:ポートフォリオの組み方と評価方法)
✔ 本シミュレーションはランダム計算です。
実際は、偏りのある結果になる可能性があります。
レンジ相場が続いたり、トレンド相場が続いたりと、システムの勝率に偏りがある場合があります。
その場合、想定よりドローダウンは大きくなります。
評価する場合の確率は、中央値(50%)ではなく、低め(20%?)に見積もる方がよいと思います。
ポートフォリオの多様化で、そのばらつきを小さくする事は可能です。
✔ 本シミュレーションの複利計算は、月1回の頻度でロット修正を行っています。
一般的なトレード毎の複利運用より、最大ドローダウンは大きく、最長ドローダウン期間は小さく評価されると推測します。
✔ 本シミュレーションは、あくまで一つの考え方を示したものです。(計算ミスの可能性もあります)
まとめ
この記事では、資金管理の考え方(簡単なドローダウンの予測)について解説しました。
資金管理とは、システムのリスク(ドローダウン)を自分の許容リスク以下に抑える事です。
リスクを見積もる際は、保守的に想定すべきと考えます。
例えば、PF=1.1(さらに小さくてもいい)として、最大ドローダウンを見積もり、
そのドローダウンを下回れば、優位性のないシステムだったと納得できる程度まで小さくするのがよいと思います。
このシミュレーションは、リスクの見積もり方について紹介しましたが、
そのシミュレーション結果から『小さいリスクで、高いリターンを目指す方法』についても示されました。
① PFの高いシステムを探す
② トレード頻度を多くする
① PFの高いシステムを探す
仮にバックテストやフォワードテストで高いPFが示されても、ばらつきの結果の一つと考えるべきです。
より、本質的にPFの高いシステムを探すには、意地悪な検証(パラメータ、通貨ペア、時間軸を振る)が必要です。
以下の記事が参考になります。
② トレード頻度を多くする
トレード頻度を適当に増やしても、リスクが増加するだけです。
ここで大切な事は、相関がないトレードの回数を増やす事です。
以下の記事が参考になります。