今回は、ポートフォリオの効果について、ご紹介します。
ポートフォリオの目的は、リスクを小さくする事、つまり、ドローダウンを小さくする事です。
FXで退場のする原因は、大きなドローダウンです。
最適なポートフォリオを組むことにより、ドローダウンを小さくし、撤退リスクを下げる事ができます。
簡単かつ有効なポートフォリオの組み方は、以下の通りです。
・相関係数の低い組み合わせを探す。
・異なる通貨ペアと時間足は、相関係数が低い
⇒ 複数通貨ペア、複数時間足に分散する。(複数通貨ペア、複数時間足でポートフォリオを組むことが効果的)
詳細は以下の記事で解説しています。
この記事では、具体的なポートフォリオの効果について、Lightシリーズ(自作EA)を例に紹介します。
・ポートフォリオの効果を、目視で確認することができます。
・ポートフォリオの効果を、数値で確認することができます。(ここが面白いので、最後までご覧ください)
ポートフォリオ前後の比較(検証内容について)
MT4では、通貨ペア単位でしか、バックテストする事ができません。
すると、『Quant Analyzer』と言うソフト(無料)を使いました。
このソフトを使えば、各通貨ペアのバックテスト結果を1つにまとめ、ポートフォリオ化した結果を確認する事ができます。
また、複数EAの結果を合成し、バックテストと同等の評価をすることができます。
今回の具体的なポートフォリオ前後の比較対象は、以下の通り
1. 通貨ペアの合成
(1)Light-α : USDJPY、EURJPY、GBPJPY、EURUSD、GBPUSD ⇒ 5通貨ペアの合成
(2)Light-β : USDJPY、EURJPY、GBPJPY、EURUSD、GBPUSD ⇒ 5通貨ペアの合成
(3)Light-γ : USDJPY、EURJPY、GBPJPY、EURUSD、GBPUSD ⇒ 5通貨ペアの合成
(Lightシリーズは、5通貨ペアに分散する事を推奨しています。)
2. システムの合成(時間足の合成)
(1)Lightシリーズ: Light-α(15分足)、Light-β(5分足) ⇒ 2システムの合成
(2)Lightシリーズ: Light-α(15分足)、Light-β(5分足)、Light-γ(1時間足) ⇒ 3システムの合成
(Lightシリーズは、3システムでポートフォリオを組むことを推奨しています。)
通貨ペアの合成
各Light-α、Light-β、Light-γの5通貨ペアの合成前後の資産曲線を紹介します。
検証条件
- 検証期間 : 2007年2月1日~2020年4月1日
- スプレッド: 1.0 pips
- 通貨ペア : 5通貨ペア(USDJPY、EURJPY、GBPJPY、EURUSD、GBPUSD)
- 時間足 : Light-α(15分足)、Light-β(5分足)、Light-γ(1時間足)
- 運用 : 単利
- 初期資金 : 10,000ドル(100万円)
- 損切設定 : 100ドル
- バックテスト結果
Light-α : バックテスト結果
Light-β : バックテスト結果
Light-γ : バックテスト結果
※ Light-γは今回と同一条件のバックテスト結果がありません。
損切設定を400ドルとしており、バックテストを1/4すれば同等の結果となります。
Light - α (5通貨ペアの合成)
(1)単一通貨ペアの資産曲線
① USDJPY
② EURJPY
③ GBPJPY
④ EURUSD
⑤ GBPUSD
(2)単一通貨ペアの資産曲線(1つのグラフ上に)
『Quant Analyzer』を使い、5つの通貨ペアを1つのグラフに表示しました。
注意)縦軸は利益です。バックテストは残高(初期資金+利益)ですので、初期資金(10,000ドル)を足すと、バックテストと同じになります。
(3)5通貨ペアの合成
『Quant Analyzer』を使い、5つの通貨ペアを合成しました。
・5通貨ペアを合成する事で、綺麗な資産曲線になりました。
(4)5通貨ペアの合成後の結果
『Quant Analyzer』で合成結果を数値として確認する事ができます。
数値の詳細評価は、記事の後半で紹介します。
Light - β (5通貨ペアの合成)
(1)単一通貨ペアの資産曲線
① USDJPY
② EURJPY
③ GBPJPY
④ EURUSD
⑤ GBPUSD
(2)単一通貨ペアの資産曲線(1つのグラフ上に)
『Quant Analyzer』を使い、5つの通貨ペアを1つのグラフに表示しました。
注意)縦軸は利益です。バックテストは残高(初期資金+利益)ですので、初期資金(10,000ドル)を足すと、バックテストと同じになります。
(3)5通貨ペアの合成
『Quant Analyzer』を使い、5つの通貨ペアを合成しました。
・5通貨ペアを合成する事で、綺麗な資産曲線になりました。
(4)5通貨ペアの合成後の結果
『Quant Analyzer』で合成結果を数値として確認する事ができます。
数値の詳細評価は、記事の後半で紹介します。
Light - γ (5通貨ペアの合成)
(1)単一通貨ペアの資産曲線
① USDJPY
② EURJPY
③ GBPJPY
④ EURUSD
⑤ GBPUSD
(2)単一通貨ペアの資産曲線(1つのグラフ上に)
『Quant Analyzer』を使い、5つの通貨ペアを1つのグラフに表示しました。
注意)縦軸は利益です。バックテストは残高(初期資金+利益)ですので、初期資金(10,000ドル)を足すと、バックテストと同じになります。
(3)5通貨ペアの合成
『Quant Analyzer』を使い、5つの通貨ペアを合成しました。
・5通貨ペアを合成する事で、綺麗な資産曲線になりました。
(4)5通貨ペアの合成後の結果
『Quant Analyzer』で合成結果を数値として確認する事ができます。
数値の詳細評価は、記事の後半で紹介します。
システムの合成
Light-α(15分足)、Light-β(5分足)、Light-γ(1時間足)の合成前後の資産曲線を紹介します。
検証条件は、上記の通貨ペアの合成と同じ
Light - α(15分足)とLight-β(5分足)の合成
(1)Light-αとLight-βの合成
『Quant Analyzer』を使い、2つのシステムを合成しました。(=2システム×5通貨ペア)
・2通貨ペアを合成する事で、綺麗な資産曲線になりました。(既に目視では比較困難なレベルですが)
(2)5通貨ペアの合成後の結果
数値の詳細評価は、記事の後半で紹介します。
Light - α(15分足)とLight-β(5分足)とLight-γ(1時間足)の合成
(1)Light-αとLight-βとLight-γの合成
『Quant Analyzer』を使い、3つのシステムを合成しました。(=3システム×5通貨ペア)
・2通貨ペアを合成する事で、綺麗な資産曲線になりました。(既に目視では比較困難なレベルですが)
(2)5通貨ペアの合成後の結果
数値の詳細評価は、記事の後半で紹介します。
ポートフォリオ効果の数値評価
通貨ペアの合成、システムの合成によるポートフォリオ効果を数値で評価しました。
通貨ペアのポートフォリオ効果
バックテスト結果を表に整理し、ポートフォリオによる効果を評価します。
ここの表で注目してほしいのは、最大ドローダウン(%)とリカバリーファクターになります。
・最大ドローダウン(%) = 最大ドローダウン(ドル) ÷ 初期証拠金(ドル)
・リカバリーファクター = 純益(ドル) ÷ 最大ドローダウン(ドル)
最大ドローダウン(%)は、EA運用時のリスクを表します。
リカバリーファクターは、EAの性能を表します。
『Quant Analyzer』では、RITURN/DD RATIOとして記載されており、リスクに対するリターンを表す指標です。
以下に通貨ペアのポートフォリオ化の効果を表にまとめました。
・通貨ペアのポートフォリオ化(合成)で最大ドローダウン(%)が大きく低下しています。
・通貨ペアのポートフォリオ化(合成)でリカバリーファクターが大きく改善しています。
(リカバリーファクターの理想は10以上であり、いずれのシステムもクリアしています)
・いつまでも、ポートフォリオに拘っていると、良いシステムは作れません。
※ 最大ドローダウンの値は、Quant Analyzerの値を転記
+----参考-------------------------+
リカバリーファクターは、EAの性能を測る重要な指標です。
プロフィットファクターに騙されず、しっかり評価できるようになりましょう。
以下の記事が参考になります。
+-----------------------------------+
システム(時間足)のポートフォリオ効果
以下にシステム(時間足)のポートフォリオ化の効果を表にまとめました。
・Light-α、βのポートフォリオ化(合成)で最大ドローダウン(%)が半減し、リカバリーファクターが倍増した。
・Light-α、β、γのポートフォリオ化(合成)で最大ドローダウン(%)が減少し、リカバリーファクターが増加した。
Light-α、βのポートフォリオ化の効果に対し、Light-γを加えた効果が小さいようにも思えます。
しかし、Light-γを加える事で、将来の不規則な変化に強くなります。
(参考)将来の不規則な変化を加味した評価
将来の不規則な変化を考慮した、厳しい評価を参考までに記載します。
詳細は、以下の記事を参考にして下さい。
検証条件
厳しいリスク評価:
±20%の範囲でパラメータをランダムに変化させた50ケースから推測
50ケースのトレードを時系列にランダムに組み替えた10000ケースから確率を算出
初期証拠金 :100万円(複数システムを同一口座で運用)
運用方法 :複利(1%)
運用期間 :10年間
その他の条件は、これまでの条件と同じ
検証結果
将来の不規則な変化を考慮した、厳しいリスク評価の結果を以下に示します。
・Light-α、βにγを加える事により、リカバリーファクターは大きく改善します。
これは、ポートフォリオに厚みが増したことで、多少の変化にも強くなったと考えられます。
① Light-α(複利:1%)
② Light-β(複利:1%)
③ Light-γ(複利:1%)
④ Light-α+Light-β
⑤ Light-α+Light-β+Light-γ
平均 : 推定リスクの平均値
確率(%):推定リスクの確率。50%は中央値、20%は下限20%を意味する。
DD : 最大ドローダウン(残高が対象期間中に最大DD万円減少する事を経験する)
DD% : 最大ドローダウン率(残高が対象期間中に最大DD%減少する事を経験する)
DD期間: 最長ドローダウン期間(最長DD期間は元の残高に戻らない事を経験する)
GR : ゲインペインレシオ(=年間リターン÷年間リスク、2.0以上が理想)
RF : リカバリーファクタ(=通算リターン÷最大リスク、10年でPF>10が理想)
まとめ
今回は、ポートフォリオの効果について、ご紹介しました。
・ポートフォリオを複雑に組み合わせる事で、リスクが低下します。
・ポートフォリオを複雑に組み合わせる事で、EAの性能(リカバリーファクター)が向上します。
・ポートフォリオを複雑に組み合わせる事で、将来の不規則な変化に強くなります。
非常に重要な内容ですので、少し長くなりました。
是非参考にして下さい。
通貨ペア、時間足に分散する理由に関する記事
リカバリーファクターに関する記事
厳しいリスク評価に関する記事