EAの基本的な運用の考え方は、

期待値の高いトレードを長期間/数多くこなす事で利益を積み上げる』ことであり、

その為には、EAのリスクを把握する必要があり、厳しいリスク評価が必要であると解説しました。

(記事(EA運用の仕方)より)

 

この記事では、その『リスク評価』についてご紹介します。

EA開発者の視点で記載していますので、参考になるかと思います。

 

リスクとは

EA運用の『リスク』とは、何を指すのでしょうか?

たまに、EA運用のリスクとして、『破産』を挙げる人がいます。

本当に破産するまで撤退しない自信がある方は、バルサラの破産確率で評価するのもよいと思います。

しかし、多くの人は破産を待てずに撤退すると思います。

『多くの機関投資家は、ドローダウンが30~35%を超えたあたり、ドローダウンからの回復期間が18カ月を超えると許容できなくなる』そうです。

<参考:トレーディングシステム入門 : 仕掛ける前が勝負の分かれ目

 

つまり、EA運用のリスクとは、最大ドローダウン率と最長ドローダウン期間になります。

 

リスク評価のポイント

リスク評価のポイントは、以下の3つです。

(1) 最大ドローダウン率と最長ドローダウン期間が把握できる事

(2) 厳しく評価する事

(3) 確率で評価する事

 

最大ドローダウンと最長ドローダウン期間

ドローダウンとは、一時的に最大資産から落ち込んだ場合の下落率のことです。

そして、最大ドローダウンとは、ある期間内で発生するドローダウンの内、最大の下落率の事を指します。(= B÷A )

ドローダウン期間(ドローダウンからの回復期間)とは、最大資産から落ち込んでから次に資産を更新するまでの期間の事を指します。

そして、最長ドローダウン期間とは、ドローダウンが発生してから、次に資産を更新するまでの最長期間を指します。(= C )

仮に、10年間運用する事を目指す場合は、

『10年間の最大ドローダウン率』と『10年間の最長ドローダウン期間』を想定しておく必要があります

 

『最大ドローダウン』を気にしている人は多いですが、『最長ドローダウン期間』を気にしている人は少ないように思います。

最長ドローダウン期間中に撤退する人も多いので、しっかり把握するようにしましょう。

 

『最長ドローダウン期間の目標値を設定する事は難しく、相関の低いポートフォリオの組み合わせで最小化を図るしかない』と言われています。

<参考:トレードシステムの法則 : 検証での喜びが実際の運用で悲劇にならないための方法

どんな優れたEAでも、長いドローダウン期間が必ず訪れますので、覚悟しましょう。

 

厳しい評価

カーブフィットの影響を、全く受けていないEAは存在しないと思っています。

リスク評価の際、そのカーブフィットの影響を可能な限り除去してあげる必要があります。

 

カーブフィットの影響を小さくする方法について、3つほど簡単に紹介します。

①  BRAC(Build Rebuild and Compare)<参考:トレードシステムの法則 : 検証での喜びが実際の運用で悲劇にならないための方法

  概要:十分な期間でシステムを構築する。(Ex. 最適なパラメータを選定 A=10)

     上記の検証期間の内、1年分を削って同じルールでシステムを構築する。(Ex. 同じルールでパラメータを選ぶと、A⇒15)

     再構築したパラメータで削除した1年分のパフォーマンスを調べる。(Ex. A=15で、削除した1年のパフォーマンスを調査)

     削除した1年について、初期システムと再構築したシステムのパラメータで結果を比較する。(Ex. A=10、A=15で、1年のパフォーマンス比較)

     両者で結果が同等であれば、実トレードでも機能する。

  長所:評価方法が容易。

  短所:カーブフィットの影響の確認はできるが、次のリスク評価に繋げにくい。私の経験では、評価があまい印象。

 

② ウォークフォワード分析 <参考:システムトレード 検証と実践

  概要:評価する年数を決めて、システムを構築する。(Ex. 5年(1990~1994年)でシステム構築)

     次の年を、上記で構築したシステムで評価する。(Ex. 上記で構築したシステムで、1995年を評価する)

     1年ずらして、システムを構築する。(Ex. 5年(1991~1995年)でシステム構築)

     次の年を、上記で構築したシステムで評価する。(Ex. 上記で構築したシステムで、1996年を評価する)

     これを繰り返し、現在まで評価する。(Ex. 上記を繰り返すと、1995~2020年分のアウトオブサンプル評価が可能)

  長所:最適化でシステムを構築しているシステムに対して、カーブフィットを除去するのに有効な方法。

  短所:パラメータを最適化しているシステムにしか適用できない。

     ウォークフォワードテストに適したルールを作れてしまう(これもカーブフィット)

     方法が多数あり、厳しい評価も甘い評価もできる。(Ex. システム構築期間と短くすると厳しく、長くすると甘くなる。)

     システム構築の際のパラメータの選択肢の数も評価の厳しさ/甘さに影響する。

 

③ パラメータの組み替え <参考:伝説のトレーダー集団 タートル流投資の魔術

  概要:パラメータを20~25%変化させて、その最適化カーブの下にある事が将来起こりうると想定する。

  長所:評価方法が容易で分かりやすい。

  短所:設定するパラメータの範囲やどれだけ細かく分解するかで、結果が変わる。

 

----参考:Lightシリーズで『③パラメータの組替え』を採用した理由------------

上記の通り、方法によって一長一短ですが、確実な方法はありません。

①BRACは、次のリスク評価に繋げることが難しくて却下しました。

②ウォークフォワード分析は、短所にも記載しましたが、

分析に加えるパラメータをどこまで広げるか、どれだけパラメータを分解するのか、どの間隔で分析するか等の方法により厳しさが変わってきます。

自分がパラメータを選定する手順をそのまま織り込むのがこの手法の趣旨ですが、

同じシステムを評価する場合でも、評価する人や方法で結果が異なるので、

システムを証明する手法としては信頼性が低いと感じたので、却下しました。

ちなみに、Light-αだけウォークフォワード分析をしましたが、③の評価より甘い結果となりました。

消去法で、③パラメータ組み替えを採用しました。

消去法と言えど、③は簡単かつ厳しい検証が可能と判断しております。

 

------参考:±20%としている理由---------

パラメータを振る範囲は、±20%としております。

±50%としてもよいのですが、50%変化させると、元のトレードから大きく相関が崩れ、別のトレードを評価している感覚です。

厳しくするためにある程度広い範囲に、一方で現実と離れすぎると検証の意味がなくなるので、バランスをみて±20%としています。

正解はないので、数年運用した後に、再評価しようと考えています。

 

確率で評価する

さあ、リスク評価の大詰めです。

最後は、『ドローダウン』を『確率で評価』します。

その為に、少しだけ数学的な手法を利用します。

 

確率で評価するための手法は以下の通り

 ① ブートストラップ法

 ② モンテカルロ法

ここでは、難しい話はしませんが、

仮にモンテカルロシミュレーションを体験してみたい方は、

書籍<システムトレード 検証と実践>が参考になるかも知れません。

モンテカルロシミュレーション用のExcelがダウンロードできるアドレスとパスワードが記載されています。

 

このようなシミュレーションを否定する意見もあります。

 ① カーブフィットされたデータでは、ごみデータを並べ替えるだけ

(参考:トレードシステムの法則 : 検証での喜びが実際の運用で悲劇にならないための方法

 ② トレードが複数の場合は相関があり、データを並べ替えると相関が崩れて、現実より優秀な結果になる。

 

以下はその対策になります。

 ① カーブフィットを除去したデータで評価(パラメータの組み替え)

 ② データを並べ替える際は、トレード間の相関が崩れないように、複数のトレードを一緒のタイミングで並び替える。

 

------参考:Lightシリーズ-------------------+

Lightシリーズでは、パラメータをランダムに±20%振ったデータを50個用意し、

そのデータを時系列にランダムに入れ替えたデータを10,000個用意し、そこから確率を計算しています。

 

まとめ

EA開発者の視点で、『リスク評価』について紹介しました。

長期運用する際に必要な、厳しいリスク評価について解説しました。

 

現在は、さらに厳しいリスク評価をしています。