私は手法を探す際、シンプルな手法を重視しています。(参照:システムトレードの手法探し)
本当に優位性がある手法であれば、シンプルなルールでも確認できます。
優位性が確認できれば、本格的に細かな検証に入ります。
ここでは、本格検証前の簡易的な調査について紹介します。
今回は、『RSIの中央値決済』の検証について紹介します。
RSIの中央値決済とは
RSI(Relative Strength Index)とは、テクニカル指標のひとつで、逆張りのシグナルとして人気があります。
計算式は、以下の通り
RSI = {直近n日間の終値の上昇幅 ÷ (直近n日間の終値の上昇幅 + 直近n日間の終値の下落幅)} × 100%
上記計算の通り、50%を平均とし、0~100%の範囲で変更します。
一般的に、RSIが70%を上回ると『買われすぎ』、30%を下回ると『売られすぎ』と判断されます。
逆張り手法は、短期売買の手法と相性が良く、『中央値決済』について紹介します。
RSIの中央値は、RSI=50%です。
『中央値決済』とは、RSI=50%で決済する手法です。
・30%で『売られすぎ』と判断し、買いエントリ、中央値の50%で決済
・70%で『買われすぎ』と判断し、売りエントリ、中央値の50%で決済
検証内容
・計算方法 : 確定足
・通貨ペア : 5通貨ペア(USDJPY、EURJPY、GBPJPY、EURUSD、GBPUSD)
・時間軸 : 5分足、15分足、1時間足、4時間足
・検証期間 : 16年間(2005~2020年)
・スプレッド: 0.1pips(EAによるバックテストの最低値)
⇒ この時点では優位性の有無を確認する事が目的であり、スプレッドを≒0として
プロフィットファクターが1.0の近辺であれば、優位性なし
プロフィットファクターが1.0から乖離していれば、優位性あり
(1.0以上であれば順張り、1.0以下であれば逆張りのシステムで機能する可能性がある)
検証結果
検証結果を以下に示します。
✔ 5分足だけ、優位性が現れました。(15分足、1時間足、4時間足では優位性なし)
一つの時間足だけにしか優位性が現れない場合、その優位性の理由がはっきりしない限り、私はあまり信用しません。
検証のミスの可能性、偶然の可能性もあります。
少しだけ、深掘りしてみようと思います。
5分足の優位性の理由の分析
以下、エントリ時間と損益の関係を下図に示します。
✔ 19~24時エントリ以外は、利益が出ている。
✔ 7時頃エントリしたトレードの利益が大きい
以上から、
✔ 19~24時エントリしたトレードは、負ける傾向にある。それ以外は、利益が優位性がある可能性がある。
✔ 7時頃のトレード結果はスプレッド拡大時間であり、あまり信用しない方がいい。
~ (参考)スプレッド拡大時間の取り扱い ~
MT4における検証は、Bid(売値)をもとに行われます。
スプレッド拡大時は、Bidに反映されますが、Ask(買値)には反映されません。(Ask = Bid + 固定スプレッド)
<スプレッド拡大時の注意すべき主なポイント>
・売りポジション保有中にスプレッド拡大が発生した場合、実際より有利(損切されにくい、利確されやすい)な結果となります。
⇒ 結果を信じてはいけない
・スプレッド拡大中にエントリした場合、実際より有利なスプレッドでトレードされた事になります。
⇒ 実際はスプレッドが広くてトレードできない。
・スプレッド拡大幅は、証券会社による差が大きく、スプレッド拡大時のチャートは、証券会社によって異なります。
⇒ 世界中のトレーダと見ているチャート形状が異なる可能性があり、証券会社により結果が異なる可能性がある。
・インジケータの多くは、過去のロウソク足を用いる為、スプレッド拡大直後は、インジケータの値も証券会社によって異なります。
⇒ 世界中のトレーダと見ているインジケータの値が異なる可能性があり、証券会社により結果が異なる可能性がある。
スプレッドを考慮した場合(1pips)
スプレッド(1pips)を考慮した結果を、以下に示します。
✔ スプレッド(1pips)を考慮すると、トレードの優位性がなくなります。
(言い換えると、1pips程度の優位性があるトレード)
以下に、エントリ時間と損益の関係を示します。
✔ 損失の多い時間帯(16~24時)とスプレッド拡大時間(7時ごろ)を避ければ、利益が出る可能性がある。
スプレッドを考慮すると、全時間帯のトレードでは優位性はなくなりますが、
トレード時間を調整すると利益が出る可能性があります。
まとめ
『RSIの中央値決済』の検証について紹介しました。
私の結論は、『5分足トレードのみ、時間帯によっては優位性がある可能性がある』です。
~その後の検証~
本手法について、さらに検証を進めた結果、『優位性の可能性は高い』と判断しました。
その優位性を元にしたEA(Moon(ムーン))を作成しました。
基本的なロジックは、本記事に記載している通りです。
EAを製品化するにあたり、いくつか細かな改良を加えています。
~RSIの優位性に対する仮説~
なぜ、RSIは時間帯によって優位性が異なるのでしょうか?
負ける時間帯は、世界中のトレーダが活気がある時間帯です。
一方で、勝てる時間帯は、アジア~欧米へと徐々に夜になる時間帯です。
本手法は5分足のみ機能するので、デイトレードが対象となります。
デイトレードは、ポジションに利益がある場合、寝る前に利確(又は損切ラインの移動)をすることが多いと思います。
一方で、プロスペクト理論では、ポジションに損失がある場合、塩漬けにする傾向があると言われています。
RSIは逆張り指標であり、デイトレーダの夜の利確(又は損切ラインの移動)が収益ドライバになっている可能性があります。
あくまで仮説ですが、この仮説が正しければ、デイトレーダがいなくならない限り、優位性が維持されます。
EA(Moon(ムーン))のフォワードテストで利益が出るようであれば、本手法に優位性がある可能性が高いと言えます。
仮に優位性が確かめられたら、今後のトレードにRSIを用いる事を検討しては如何でしょうか?