EAを運用開始する前に、最低限チェックすべき項目について解説します。

以下の2つのフェーズにおけるチェック項目を解説します。

1. インキュベーション(デモ口座の運用)

2. リアルトレード開始直前

インキュベーション(デモ口座の運用)

リアルトレードに移る前に、3カ月ほどデモ口座(又は少額)で運用する事をお薦めします。

このインキュベーションを跳ばして、リアルトレードを開始して後悔する人がいます。

以下のチェック項目を把握していれば、少なくともインキュベーションの要否の判断ができると思います。

 

インキュベーションの目的は、バックテストでは見つけきれなかった設計上のミスがない事の確認です。

バックテストとリアルトレードの違いは、以下の2点です。

(1) スプレッドの影響

(2)ティックデータの影響

(3) カーブフィットの影響

 

スプレッドの影響

多くのバックテストは、スプレッドを固定した条件で計算しています。

ティックデータを用い変動スプレッドの条件で計算している場合も、運用する証券会社が異なれば、結果は異なってしまいます。

注意すべきは、スプレッド拡大時の対応です。

日本時間の早朝や指標発表時は、スプレッドが拡大します。

逆指値を用いる手法の場合は、スプレッド拡大時に注意する必要があります。

スプレッド拡大時の対策を怠った場合、バックテストでは発生しなかったエントリ/損切が発生する事になります。

このタイミングで生じたトレードは、長期的に不利に働きます。

インキュベーション期間に、スプレッド拡大時の挙動を十分に確認しましょう。

 

各証券会社の早朝スプレッドの例(詳細は、GogoJungleのスプレッド比較

ティックデータの影響

1分足のスキャルピングでは、ティックの動きがトレード結果に影響を与える場合があります。

ティックの動きがトレードに影響するシステムは、バックテストでもティックデータで評価する必要があります。

さらに、ヒストリカルデータとリアルトレードで証券口座が異なる場合、リアルトレードで想定外の結果になる可能性があります。

ヒストリカルデータ元の証券口座から変更する場合は、インキュベーション期間にティックの動きの影響を十分に確認する必要があります。

 

カーブフィットの影響

カーブフィットされたシステムほど、リアルトレードで成績が悪化します。

その為、EAを開発する際、カーブフィットを極限まで小さくするよう努力します。

そして、その結果は最終的にリアルトレードで表れます。

しかし、リアルトレードにはばらつきが含まれるため、簡単にカーブフィットの影響を評価する事はできません。

リアルトレード = バックテスト - カーブフィット ± ばらつき

ばらつきは、回数が少ないと大きく、回数が多くなると小さくなります。

ポイントは、少ない回数で全てを判断しない事だと思います。

少なくとも1年程度運用し、確率的に想定の範囲内かどうかをチェックするのが良いと思います。

つまり、このインキュベーションの段階では、EAの実力を判断する事はできないと考えています。

参考:確率的な評価方法

 

リアルトレード開始直前

リアルトレード開始前の最終チェックは、9項目です。

自作EAの運用状況を例に紹介します。(例:EA運用状況

(1)EA   : Light-α、Light-β、Light-γ

(2)時間足  : Light-α(15分)、Light-β(5分)、Light-γ(1時間)

(3)通貨ペア : 5通貨ペア(USDJPY、EURJPY、GBPJPY、EURUSD、GBPUSD)

(4)運用資金 : 個人の余力資金

(5)運用 方法: 複利 1%

(6)証券口座 : 外為ファイネスト(スプレッド小、最小ロット0.01)

(7)VPS   : ConoHa for Windows Server(WIN2GB 

(8)運用期間 : 目標10年以上

(9)撤退基準 : 40%ドローダウン

 

(1)EA、(2)時間足、(3)通貨ペア

(1)~(3)は、運用するポートフォリオの内容です。

運用直前ですので、完全に信用しているEAという事になります。

EAに不安が残っている場合は、長期運用する事はできません。(ドローダウンで撤退する結果となります)

まだ、不安がある場合は、カーブフィット除去後のリスク評価をする事で自信を持つことができると思います。

 

(4)運用資金

運用資金のポイントは、2つです。

余裕資金で運用する

長期運用する為に、運用中にメンタル負荷にならない金額で運用しましょう

具体的には、1カ月くらい放置しても気にならないくらいの資金で運用しましょう

 

最低必要証拠金

ロット固定で運用する場合

レバレッジの制限により最低必要証拠金が決まります。

例:通貨ペア:USD/JPY、為替:110円/ドル、0.1ロット(MT4の場合、10万通貨/ロット)、レバレッジ25倍(国内証券会社)

 110円/ドル×0.1ロット×10万ドル/ロット÷25 = 4.4万円

複数ポジションを保有しながら運用する場合は、その合計が最低必要証拠金になります。

例:上記例で同時に10ポジションを保有する場合

 4.4万円/ポジション × 10ポジション = 44万円 

ポートフォリオ運用する場合は、各EAの最低必要証拠金を合算した金額が最低必要証拠金となります。

 

ロット変動で運用する場合

複利運用(証拠金に連動して、ロットが変動する)の場合は、複利率が制限されます。(具体的には(5)で紹介します)

EAによっては、証拠金がエントリ回数に影響する場合もあります。

証拠金と複利率によりロットが変動する為、証拠金・複利率が小さいと最小ロットの制限にかかる可能性があります。

 証拠金・複利率 ⇒ ロット VS 最小ロット

 

<例:Lightシリーズ(自作EA)の場合>

下図のように、推奨証拠金を計算しています。

具体的には、バックテストでトレード結果にほぼ影響がない範囲を評価しています。

(5)運用方法

EAで大きな利益を得るためには、複利を生かして長期運用する事です。

是非、単利ではなく、複利運用しましょう。(参考:複利運用を推奨する理由

複利率は、以下の2つを参考に決定します。

 ① リスク管理

 ② レバレッジと証拠金

 

リスク管理

複利率を高くすると、高い利益が期待できる一方、リスクも大きくなります。

自分が許容できるリスクまで、複利率を下げる必要があります。

EAのリスクを把握した上で、複利率を決定するようにして下さい。

具体的な方法は、以下を参照下さい。

(参考:カーブフィットを除去したリスク管理

(参考:資金管理の考え方(許容リスクと最大ドローダウン)

 

レバレッジと証拠金

複利運用の場合、証拠金に連動して、ロットが変動します。

複利率に比例してロットが大きくなり、ポジション数によっては必要証拠金を超える可能性があります。

その場合、証拠金不足となり、保有ポジション数が制限されてしまいます。(トレード数が減少する)

 証拠金・複利率 ⇒ ロット×ポジション数 VS 必要証拠金

 

(6)証券口座

証券会社を選択する主なポイントは、以下の通り。

取引コスト

約定力

ストップレベル

最小ロット

 

取引コスト(=スプレッド+手数料)

通常時のスプレッドと拡大時のスプレッドを比較し、証券会社を選びましょう

スプレッドが拡大する早朝や指標発表時にトレードしない場合は、通常時のスプレッドだけを比較すればいいですが、

スプレッド拡大時にポジションを保有するようなEAの場合は、スプレッド拡大時も考慮する必要があります。

ONADA、外為ファイネスト、ゴールデンウェイ・ジャパン(FXTF)のスプレッドが狭いと思います。

詳細は、GogoJungleのスプレッド比較

 

約定力

約定力が弱いと、スリッページが発生し、エントリのタイミングが大きくずれる可能性があります。

約定力を気にする場合は、NDD方式の証券会社を選びましょう。

上記①の内、NDD方式は、ONADA、外為ファイネストになります。

 

ストップレベル

ストップレベルとは、『待機注文(指値、逆指値)を出す際、現在の価格と待機注文の差(pips)の制限値』になります。

ストップレベルが広いと、待機注文が通らないケースが発生します。

現在の価格の近くに待機注文(指値、逆指値)を出すシステム(スキャルピング系、ブレイクアウト系)は注意が必要です。

 

最小ロット

最小ロットとは、発注可能なロットの下限値になります。

複利運用の場合、ロットは証拠金と複利率によって変動します。 証拠金・複利率 ⇒ ロット

証拠金・複利率が小さい場合、ロットは小さくなり、最小ロットが影響します。

特にスイングトレードの場合は、縦軸(pips)を広く使う為、スキャルピングと比較すると小さいロットを扱うので、最小ロットが重要になります。

上記①の内、ONADA:最小ロット=0.1、外為ファイネスト:最小ロット=0.01になります。

 

自作EAの場合は、最小ロット=0.01を推奨しており、外為ファイネストが適していると考えています。

【外為ファイネスト】国内MT4・NDDカリネックスブリッジ

 

(7)VPS(仮想専用サーバ)

EAを運用する場合、MT4を常時起動させておく必要があります。

MT4を常時起動させる方法は、①PCを使用する。②VPSを利用する。の2つあります。

この内、②VPSの利用をお薦めします。

VPS(Virtual Private Server)とは仮想専用サーバーの略称です。

物理的なサーバー内に、複数の仮想サーバーがあり、一つ一つにOSが準備されています。

その一つの仮想サーバをレンタルして、MT4を起動させてEAを運用します。

インターネットで接続可能なPCをレンタルする事をイメージ頂ければ良いと思います。

しかも、かなり安価でレンタルする事ができます。

 

私は、ConoHa for Windows Server(WIN2GBを利用しています。

VPSは、まだ価格競争が激しく、各社で次々とお得なプランが現れてきている状況です。

その為、重要なのは、身軽に変更できるプランを選ぶことだと思います。

お得な新プランが現れたとしても、継続ユーザには適用されず、新規ユーザのみが対象となります。

例えば、1000円/月の新プランが現れたとしても、初期契約が1800円/月であれば、更新価格は1800円/月となります。

新プランを適用する為には、旧プランを解約して、新プランに乗り換える必要があります。

ConoHaは初期費用なし、時間課金(1時間単位)であり、解約の負担が小さく、乗り換える事ができます。

 

参考に、自作EA(Lightシリーズ)をConoHaで運用した際の状況を紹介します。

条件 :一つのMT4で、15個(3つのEA×5通貨ペア)を運用(メモリ:約70MB)

結果 : 

ConoHa for Windows Server(WIN1GB)

⇒ 初期状態でメモリ使用率が80~90%であり、EAを運用すると95%まで上がる。

  1カ月間支障なく運用できたが、長期運用を考えると少し不安

ConoHa for Windows Server(WIN2GB)

⇒ 初期状態でメモリ使用率が60%であり、EAを運用すると65%まで上がる。

  長期運用を考慮すると、メモリに余裕がある2GBプランがよいと判断

 

(8)運用期間

運用期間は長期間(10年以上)を目標にしましょう。

長期間運用を目指す理由は、2つです。

複利の力を最大限に利用できる。

EAの性能が発揮される。

 

短期運用は、ギャンブルと同じです。

短期運用の結果は、ばらつきが支配的です。

リアルトレード = バックテスト - カーブフィット ± ばらつき

運用期間が長くなれば、ばらつきの影響が小さくなり、EAの性能に近い結果になります。

EAがプラスの期待値をもっているのであれば、複利で長期間運用すれば大きな利益を得る事ができます。

 

(9)撤退基準

EAで大きな利益を目指すためには、複利で長期運用する必要があります。

長期運用は、想像以上に難しいことです。

長期運用のコツは、自分へのメンタル負荷を小さくする事です。

事前に撤退基準を決めておくことで、運用中に判断する事がなくなるので、メンタル負荷が軽減されます。

 

撤退基準の決め方は、以下を参考

 

長期運用する為のコツは、以下を参考

 

まとめ

EAを運用開始する前に、最低限チェックすべき項目について解説しました。

1. インキュベーション(デモ口座の運用)

運用開始前に、デモ口座でバックテストでは確認できない、以下の影響を確認するようにしましょう。

(1) スプレッドの影響・・・スプレッド拡大時の影響

(2)ティックデータの影響・・・スキャルピングの場合

(3) カーブフィットの影響・・・短期間では評価できない

 

2. リアルトレード開始直前

最低限、以下の項目をチェックしておきましょう

(1)EA、(2)時間足、(3)通貨ペア、(4)運用資金 、(5)運用 方法

(6)証券口座、(7)VPS、(8)運用期間 、(9)撤退基準

 

いざ、運用を開始です。

以下で自作EAを運用しています。

これから、大きなドローダウンを経験すると思いますが、長期的には利益がでると信じているので、撤退基準を超えない限りは保有する予定です。

ドローダウンで苦しんでいる時など、是非参考にしてみて下さい。

Lightシリーズの運用状況

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